2017年2月9日、佐藤さとるさんがお亡くなりになりました。佐藤さんといえば、言わずと知れた日本の童話作家で、「コロボックル物語」という児童文学のシリーズがとても有名です。
私も小さい頃からコロボックル物語が大好きで、講談社の青い鳥文庫で、柏葉幸子さんや「クレヨン王国」シリーズとともによく読んでいました。大人になってからも何度も読み返して、そのたびに違う発見ができる素敵な物語です。
大人になってから読み返したコロボックル物語は、また一味違うものでした。すばしっこくて勇敢な小人コロボックル。昔は、自分にもこんな秘密の小さな友達ができたらいいのにな、という気持ちで読んでいました。今は、我が子がコロボックルの友達になれたらどう行動するんだろう、なんて妄想したりして楽しんでいます。
今日は佐藤さとるさんのご冥福をお祈りするとともに、「コロボックル物語」について、ちょっと語ってみたいと思います。
目次
佐藤さとるさんという人
1928年神奈川県横須賀市生まれの童話作家。代表作の「コロボックル物語」シリーズは、「日本初のファンタジー小説」とも言われています。
「佐藤さとる公式サイト」はこちらです。
コロボックル物語のあらすじ
現在、佐藤さとる作で6作品、有川浩作で2作品が刊行されています。
佐藤さとる 作
だれも知らない小さな国
高いがけと杉林、そして小山に囲まれた三角平地。きれいな泉と緑に溢れたこの場所は、「ぼく=せいたかさん」の秘密基地でした。なぜか人が来ないその小山をのんびり探検して過ごすのが「ぼく」の秘密の楽しみです。ところが、実はこの小山には、小指ほどしかない小さな人たちの秘密の国でもあったのです。
シリーズ第一弾は、人間の「せいたかさん」とコロボックル達の出会いの物語。大人になった「せいたかさん」は、小山で出会った「おちび先生」とともに、この小山を守るために奮闘します。
豆つぶほどの小さないぬ
「せいたかさん」とコロボックル達が建国した「矢じるしの先っぽの国コロボックル小国」は、どんどん発展を遂げています。そんな中、昔コロボックルが飼っていた「マメイヌ」という豆粒ほどの犬が、今でもどこかで生きているという話が飛び込んできた!若いコロボックルを中心に立ち上げた新聞社の第一報に「マメイヌ」を載せるべく、風の子と呼ばれるコロボックルが、仲間と共に大活躍します。
星からおちた小さな人
空飛ぶ機械をテスト中、モズに襲われた仲間を助けた「ミツバチぼうや」は、空から落ちて行方不明に。コロボックル達が必死になって捜索しましたが、「ミツバチぼうや」は人間の男の子に発見され、捕まってしまっていました。今まで見たこともない小指ほどの人を見つけた少年は、この小人は宇宙のほかの星から落ちてきたんだ!と大興奮。逃げないように鉛筆削りの箱に、しっかり閉じ込めてしまいます。さて、「ミツバチぼうや」を救出することはできるのでしょうか。
ふしぎな目をした男の子
つむじ曲がりで頑固者の「ツムジイ」と呼ばれるコロボックルが見つけた人間の男の子「タケル」は、他の人間たちには見えない早さで移動するコロボックル達をしっかり見ることのできる不思議な目を持っています。人間と友達になるなんてまっぴらごめん!と思っていたツムジイですが、タケルのことが気になって仕方がありません。ついにはこの子と友達になってしまいます。そんな中、タケルが良く遊んでいた池が、大人たちの身勝手でごみを捨てられ、汚れてしまいます。ついには池をつぶしてしまおうという計画も。タケルと、タケルを助けるコロボックル達は、この池を救いたいと奮闘します。
小さな国のつづきの話
佐藤さとる版「コロボックル」シリーズの、完結編と言われる本書。小さい頃から「ヘンな子」と言われている正子は、図書館に勤めています。少し変わっていて、でも物静かで聞き上手な正子は、図書館に来る子供たちからなぜか好かれる不思議な雰囲気を持っています。そして正子の図書館を訪れた鉄道好きの男の子「ムックリ」くんに勧められて読んだのが、「コロボックル」シリーズの4冊。驚いたことに、そこには、小さい頃に正子が出会った小人についての詳しいお話がいっぱい描かれていたのです。
そんな正子と友達になったのは、女だてらに世界を旅することを夢見るコロボックルの「ツクシンボ」。物語は、正子の親友「チャム」ちゃんとのつながりや、ツクシンボの小旅行へと進んでいきます。
小さな人のむかしの話
「ふしぎな目をした男の子」でも登場したツムジイが研究している、コロボックルの歴史や昔話を集めた短編集です。コロボックルシリーズでは外伝にあたります。私たちが良く知っている昔話も、コロボックルからみるとまた違うお話となっていたり、小人ならではの虫たちとの話があったりと、とても興味深く読み進められます。
有川浩 作
コロボックル絵物語
佐藤さんから有川さんへ引き継がれたコロボックル物語の第一弾、ですが、新しい物語というよりは、今までのコロボックル物語の紹介と、これからのコロボックル物語の導入、という位置づけではないでしょうか。絵物語というだけあって、村上勉さんの描くコロボックルたちがいっぱいです。
だれもが知ってる小さな国
有川版コロボックルの初長編作品。
このお話の主役は、「ヒコ」という、「はち屋」の家の男の子。「はち屋」とは、ミツバチと共に花を追いかけて日本中を移動する、養蜂家のことです。不思議な小人「ハリー」と出会ったヒコは、夏の北海道で、同じくはち屋の「ヒメ」と友達になります。コロボックルと友達になるべく名付けられたとしか思えないヒメとヒコの2人は、不思議な目を持ち、コロボックルに見守られている「ミノルさん」という青年と暖かな交流を持ちます。ところが、テレビのディレクターをやっているというミノルさんのいとこが持ち込んだ騒動が、コロボックルのことが世の中にばれてしまうかもしれない大事件へ発展!さて、コロボックル達はどうやってこの危機を乗り越えるのでしょうか。
講談社文庫 コロボックル物語特設ページ
「講談社文庫コロボックル物語特設ページ」は、コロボックル物語の歩みや「有川版コロボックル物語」誕生のエピソードも満載で、コロボックル物語好きなら一度は見てほしいサイトです。
佐藤さとるさんと有川浩さんの4ページにわたる対談ものっています。お二人の意外な共通点が「いい伴侶にめぐまれていること」なんて話も読めちゃいますよ。
そして物語は有川浩さんへ受け継がれる
「佐藤さとるさんがいたから作家になった」と公言しているほど、昔からコロボックル物語の大ファンだった有川浩さん。有川さんといえば、大人気「図書館戦争」シリーズや、「フリーター、家を買う」「三匹のおっさん」などの映像化された作品も多い、とても人気のある作家さんです。上記の作品はもちろんのこと、「レインツリーの国」や「阪急電車」など、どれが一番とは言えないくらい私も大好きな作品がいっぱいです。
そんな有川さんが、コロボックル物語を引き継ぐ。これを知った時は本当に心臓が止まるんじゃないかというくらい驚きました。すっかり私の中では完結してしまっていたコロボックル物語に、新しい物語が生まれる。しかもそれを描くのが有川浩さん、という。もう何に驚いてよいのかわからない。久々にドキドキわくわくときめきました。
多くの人の心に残る「コロボックル物語」という作品を生み出し、素敵な世界を見せ続けてくれた佐藤さとるさんへ、心からの感謝を捧げます。そしてこれからは、有川浩さんがコロボックル物語を引き継いでいってくれる。世界観はそのままに、また違ったコロボックルたちと出会えると思うと、これからのお話もとても楽しみです。
我が子にはまだ少し早いけど、いつか子供たちにも読ませてあげたい。そしてまたその子供たちへと、ずっとコロボックルたちのお話が続いてくれるといいな。
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